報道によれば、Twitter(ツイッター)を買収したイーロン・マスク氏が、突如Twitter(ツイッター)の従業員を大量に解雇したとされています。
Twitter Japan株式会社も日本法人であることから、日本法が適用されることになります。
少なくとも日本の労働法では、解雇は厳しく制限されています。
そこで、以下のコラムでは、今回のイーロン・マスク氏による大量解雇が有効か否かについて、また突然解雇された場合の対策について解説していきます。

解雇について

解雇の概要

解雇は、大きく分けて①普通解雇と②懲戒解雇の2つに分けられ、①普通解雇の中には、整理解雇というものがあります。

普通解雇

普通解雇とは、従業員の能力不足や協調性の欠如、会社の経営悪化、就業不能など、社員の労務提供が不十分な場合に行われる解雇をいい、懲戒解雇以外の解雇をさします。
普通解雇を行うには、厳しい要件を満たす必要があります。そのため、使用者側にとって非常に高いハードルが課されています。

普通解雇のうち、人員の整理を目的として行われる解雇は「整理解雇」と呼ばれ、これも普通解雇の一種です。
今回のイーロン・マスク氏によるTwitter社従業員の大量解雇は、報道によれば、Twitter社の会社の経営悪化を打開する措置と考えられるため、この「整理解雇」に位置づけられるものと考えられます。

解雇が適法といえる場合

解雇の合理性・社会的相当性

解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効とされます(労働基準法第18条2項)。
すなわち、解雇が有効とされるためには、解雇権の濫用とされないだけの①合理的な理由②社会的相当性が必要なのです。
そこで、解雇を実行する前には、当該事案に①合理的な理由と、②社会的相当性があるかどうかを十分に調査・検討する必要があります。

整理解雇の4要件

また整理解雇の場合については、裁判所は、以下のような4つの要件を、整理解雇の判断要素として掲げています。
1 人員削減の必要性
2 解雇回避努力
3 人選の合理性
4 手続の妥当性

1 人員削減の必要性

一般的には、債務超過や赤字累積に示される高度の経営上の困難から、人員削減措置が要請されるという程度の、人員削減の必要性が要求されます。
しかし、報道されている情報を見る限りは、Twitter社の資産は3200億円にも及ぶ一方、直近の赤字は330億円程度ということですので、人員削減の必要性まであっとはいえないように思われます。

2 解雇回避努力

人員削減を行うには、使用者は、配転、出向、一時帰休、希望退職の募集など他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務を負うとされています。
しかし、報道されている情報を見る限りは、そのような解雇回避手段が採られたという事実はないように思われます。

3 人選の合理性

何名かの労働者の整理解雇がやむなしと認められる場合にも、使用者は解雇する労働者の選定については、客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用して行うことが必要とされます。
今回は大量の解雇ということですが、そのような客観的で合理的な基準を設定し適用したかどうかは不明です。

4 手続の妥当性

裁判例は、労働者に対し、整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき納得を得るための説明を行い、誠意をもって協議すべき信義則上の義務を負うと判断しています。
今回の大量解雇は、イーロン・マスク氏がTwitter社を買収後すぐに比較的速やかに行われたという経緯から、そのような説明や協議が十分に行われていたか疑問があります。

今回の解雇は無効となる可能性が高い

あくまで報道されている情報をみる限り、以上のとおり今回の解雇は整理解雇の4要件を満たさないと考えられますので、無効と判断される可能性は高いと思われます。

突然解雇された場合の対策

突然解雇されたら、まず「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求める!

会社から解雇を宣告された場合にはまず、「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求めましょう。

解雇通知書

解雇通知書とは、会社が労働者に対し、解雇の意思表示を通知する書面のことです。
もし仮に後で会社側が「労働者側の都合で自己都合退職した、合意解約した」などと主張してきたとしても、この通知書があれば、その言い分を否定し、解雇であることを主張できます。

解雇理由証明書

解雇理由証明書とは、解雇理由(解雇事由)について具体的に記載された書面のことです。
労働基準法22条1項に基づき、労働者から請求された場合に、会社が遅滞なく交付しなければならないものです。

なぜ「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求めるのか?

後々重要な証拠となる

解雇をめぐって労働者と会社側とで紛争となり、話し合いや交渉が必要となった場合や労働審判、訴訟へと発展してしまった場合に、会社側が解雇の有効性を主張するために、当初説明していた解雇理由とは別の理由を追加で主張してくることがあります。
そこで、早期に解雇通知書、解雇理由証明書を取得しておけば、会社は、当該解雇理由証明書に記載された理由以外の主張ができなくなりますので、後付けの主張を許さず会社側の言い分を確定させることができるのです。

解雇に納得がいかなければ、弁護士に相談を

客観的・合理的な理由が存在しない、社会通念上相当でない解雇であれば、不当解雇です。
まずは弁護士への相談を検討することが重要です。
またその場合は、労働事件を多く扱っている法律事務所や労働専門の弁護士に相談すべきです。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、16名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小野塚 直毅
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