解雇を争う方法(流れ)

勤務先から解雇を言い渡されてお困りではありませんか。そのような場合、仕事を失って給与が支払われなくなることにより、大きな苦境に陥ることになるものと思いますので、解雇を争う方法をご案内いたします。一連の流れをご確認頂き、今後の方針を決める参考にして頂ければと思います。

(1)退職証明書の交付を要求する

労働基準法第22条に基づき、労働者は使用者に対して、退職の際に、退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつてはその理由を含む。)について証明書の交付を請求することができ、使用者側は遅滞なくこれを交付する義務があります。こうした証明書は「退職証明書」といいますが、解雇を争うためにはこの書類の交付を要求すべきです。
この書面が発行されますと、使用者側が「労働者が自主退職した」と主張することが難しくなりますし,また、この書面は解雇予告手当の請求をするための証拠になります。
また,使用者には退職証明書に解雇の理由を記載する義務があり、また、解雇予告をした場合に、労働者は退職日までの間に使用者に対して、解雇の理由を記載した「解雇理由証明書」の交付を請求することができます。解雇を争うためには、解雇の理由を把握して反論を行う必要がありますので、これらの書類の交付は請求すべきと考えます。
解雇の理由としては、
・労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失
・労働者の職場規律(企業秩序)の違反の行為
・使用者の経営上の必要性(合理化による職種の消滅と他職への配転不能、経営不振による人員整理、会社解散等)
といったものが考えられ、使用者が主張する解雇の理由を把握し、これに対する反論を行う必要があります。

(2)使用者の主張する解雇の理由は十分な理由であるかを検討する。

使用者の主張する解雇の理由の内容を把握したら、十分な理由であるかを検討すべきです。
例えば、労働者が病気やケガによって労務提供をすることができない状態であったとしても、使用者が休職制度を定めているのにその制度を利用させていない等の事情があれば、解雇を争うことができますし、また、職場復帰が可能であるのにこちらの意見を聞かずに解雇を強行するような場合は解雇を争うことができる可能性があります。
また、職場の規律違反をしてしまった場合であっても、規律違反の内容が重大でなく、今までに規律違反による注意を受けたことが無く、再び規律に違反することが無いように反省している等の事情があれば、解雇を争うことができる可能性があります。
さらに、使用者側が、経営不振による人員整理を主張したとしても、経営不振の程度が解雇を行うことが許されるほど重大なものでない、解雇の対象となる労働者を選別した方法が適切でない等の事情があれば、解雇の理由としては不十分である可能性があります。

(3)解雇の撤回を要求する通知書を送る。

使用者の主張する解雇の理由が十分でない場合は、解雇の撤回を要求する通知書を送るべきでしょう。この場合、復職までに受け取ることのできるはずの賃金の請求をするということもあり得ます。

(4)労働審判手続

解雇の撤回を要求する通知書を送っても、使用者が解雇の撤回に応じないという場合、裁判所の手続きを利用する必要があります。こうした手続きの中に、労働審判手続という方法があります。原則として3回以内の期日の中で、調停を成立させたり、審判を出したりするなどして審判を終了させなければならないという手続きであり、早期の解決のための手続きになります。労働者側は、証拠を提出して、会社側の主張する解雇の理由に対する反論を記載した申立書を裁判所に提出し、使用者側はこれに対する答弁書を提出し、裁判所が短期間の間に一定の結論を提示します。労働者側は、復職ではなく、金銭的な解決を要求する場合に、早期の決着が期待できるため、労働審判の手続きが選択することがあり、また、労働審判については、結論に対して異議がある場合は異議申立によって通常の訴訟へ移行できるというメリットもあります。

(5) 訴訟手続

裁判所の手続きの1つで、証拠を提出したり、証人尋問を行って紛争の解決を図る手続きです。労働審判の3回以内の裁判だけでは十分な審理ができないような難しい問題があるとか、証人尋問を行って事実関係を明らかにしなければならない等の事情がある場合は、訴訟手続を利用することになります。訴訟事件は6カ月以上審理に時間がかかることが見込まれますが、裁判所に最終的な判断をしてもらうのに、きちんとした時間を設けて、審理をしてもらった方が良い事件は訴訟手続を利用します。

(6)どのようなことを目標にして解雇を争うべきか。

解雇を争いたいという方は金銭の支払いを求める方が多いのですが、解雇を言い渡されてから復職が認められるまでの期間において、解雇がなされなければ本来受け取れるはずの賃金(未払賃金と言います)を請求することができます。また、復職の意思がないという場合であっても、仮に会社が復職を認めたとしても、その後、労働者には退職をする自由があるため、復職及び賃金の請求を求めていくというのが王道の方法になるものと考えています。訴訟を行えば、解雇を言い渡されてから復職が認められるまでに6か月以上が掛かりますので、6か月分以上の未払賃金を請求すべきでしょうし、労働審判等の手続きを利用する場合も相当期間の未払賃金を請求すべきでしょう。
また、当然ですが、復職を求めたいというのが目標であれば、復職を求めて解雇を争うことになります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉
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