
試用期間中の解雇や試用期間満了時の本採用拒否に対して、労働者が対抗するためには、法的な枠組みや過去の裁判例を理解し、適切な対応を取ることが重要です。
試用期間中の解雇・本採用拒否の法的枠組み

試用期間中の労働契約は、「解約権留保付労働契約」とされ、使用者は一定の条件下で解約権を行使できます。しかし、最高裁判所の判例(昭和48年12月12日、三菱樹脂事件)では、この解約権の行使は「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる場合」にのみ許されるとされています。つまり、試用期間中であっても、解雇や本採用拒否には正当な理由が必要です。
労働者が取るべき対応

1. 解雇理由証明書の請求
解雇や本採用拒否の理由を明確にするため、会社に対して解雇理由証明書の発行を求めましょう。これは、今後の対応を検討する上で重要な資料となります。
2. 会社への撤回要求
解雇や本採用拒否に合理的な理由がないと考えられる場合、会社に対して解雇又は本採用拒否の撤回を求めます。この際、内容証明郵便を利用して、正式な形で通知することが望ましいです。
3. 交渉・労働審判・訴訟の検討
会社との交渉で解決が難しい場合、労働審判や訴訟を検討します。労働審判は、迅速な解決を目指す手続きであり、3回以内の審判期日で解決を図ります。訴訟は、より慎重な審理が行われ、時間がかかる可能性があります。
裁判例の紹介
三菱樹脂事件(最高裁 昭和48年12月12日)

試用期間中の解雇について、解約権の行使は「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と認められる場合」に限られると判示されました。これは、試用期間中であっても、解雇には正当な理由が必要であることを示しています。
東京地裁 平成27年1月28日判決

土木工事の設計等を行う会社で、試用期間終了時に本採用を拒否された従業員が、解雇の無効を主張しました。裁判所は、会社の解約権行使は無効であると判断しました。理由として、入社後2週間で作成した図面に不備があり、上司に図面の作成方法について指示を仰ぐべきであったところ、それを怠ったという不備があったものの、その後は指示に従った会社の要求する作業を実施していたという事情があったことから、業務遂行能力に問題があるとまでは認められず、解約権行使に合理的な理由がないとされました。
東京地裁 平成24年8月23日判決

生命保険募集業務を行う会社で、試用期間中に本採用を拒否された従業員が、解雇の無効を主張しました。裁判所は、会社の本採用拒否は無効と判断しました。
事案の内容としましては、まず、職場での受動喫煙が原因で体調を崩したという理由で従業員が休職したところ、受動喫煙に関する専門医の診察予約が取れているにもかかわらず、1か月間近くにもわたって、勤務先に対し、上記の診察予約の点や体調の回復状況について全く連絡を入れなかったばかりか、その休職期間の終了間際になってようやく電話連絡を入れ,勤務先代表者に対し,あたかも自己に有利な専門医の診断結果が出るまで休職を続け、しかも、その間の給与支払も請求するかのような内容の伝言(本件伝言)を行い,それ以外には被告に対して連絡を取ろうとはせず、そのまま本件試用期間の終期を向かえたという従業員側の不備がありました。
しかし、被告代表者は,従業員が保険営業マンとして期待していたほどの能力等を有していなかった上、勤務先の社風からみて協調性に欠けるものとしか思えない言動が散見されたことから、それにもかかわらず、受働喫煙の影響をうかがわせる他覚的所見を提出しないまま分煙措置の徹底を求めて譲らない従業員を疎ましく思うようになり、従業員に対し、かなり強引な退職勧奨を行い、自主退職を迫ったものの、休職の合意に応じてもらうのがやっとであったため、休職に入ろうとしている原告から貸与中の被告事務室の鍵やパソコンを取り上げ、事実上、被告事務室への立入を禁じるに等しい措置をとっていたという事情がありました。
そのため、従業員の本件対応の背景には、営業マンとしての能力や受動喫煙等をめぐる勤務先代表者と従業員との確執、勤務先代表者の従業員に対する強引な退職勧奨と勤務先事務室からの事実上の締め出し行為等が伏在しており、これらの事情が従業員から勤務先代表者に対する病状報告等適切なコミュニケーションをとる機会を奪い、従業員の本件対応を惹起させる原因の一つとなっていたともみることができ,そうしてみると従業員の本件対応それ自体は、従業員が保険営業マンとしての資質、能力等に大きな問題を有していることを必ずしも十分に推認させるものではないと裁判所は判断しました。
そして、勤務先が従業員の能力適性を見極めることなく解約回避措置を取らずに解雇を実施したことを違法と判断しました。
まとめ

試用期間中の解雇や本採用拒否であっても、正当な理由が必要であり、労働者は適切な対応を取ることで対抗することが可能です。解雇理由の明確化、会社への撤回要求、労働審判や訴訟の検討など、状況に応じた対応を行うのが良いと思います。また、弁護士に相談することで、専門的なアドバイスやサポートを受けることができます。
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