会社から退職して欲しいと言われている場合(退職勧奨)の対処法

退職勧奨とは

退職勧奨とは、会社から労働者に対して「辞めてほしい」「退職届を出してくれないか」などと言って、退職するように勧めることをいいます。
分かりやすい例としては、経営の傾いた会社が人員削減の手段のひとつとして行う場合や、高齢の労働者に対してのいわゆる「肩たたき」なども、退職勧奨の一種です。希望退職の募集なども広い意味での退職勧奨に当たります。
また、能力不足・成績不振・意欲不足などを理由とした退職勧奨もよく聞かれるところです。

退職勧奨は、あくまで労働者からの自主的な退職を勧めたり、労働契約の合意解約を目指したりするものであり、会社側が一方的に労働契約の解除を通告する「解雇」(いわゆるリストラ、クビ)とは異なります。
したがって、退職勧奨の場合は、これに応じるかどうかは労働者の判断に委ねられており、退職勧奨を受け入れることも断ることも自由ということになります。

退職勧奨は違法?

退職勧奨そのものが直ちに違法とはなりませんが、そのやり方や頻度によっては違法となり、損害賠償請求が認められることがあります。

例:下関商業高校事件 最判昭和55年7月10日
退職を拒否していた市立下関商業高校の教員2人(X1・X2)に対して、(X1)昭和45年2月から5月までの間に計12回、(X2)同年2月から6月までの間に計13回、1回につき20分から1時間余りの時間をかけて退職勧奨が行われた事案で、慰謝料請求(損害賠償請求)が認められた。

退職勧奨をされた場合の対処法

⑴退職するかしないかは自由

退職勧奨は、会社側が一方的に行う「解雇」と違って、労働者側が退職することに応じない限り、退職になることはありません。退職勧奨に応じて退職をするかどうかは、労働者側が自由に決めて良いということになります。
まずは「なぜ自分が退職を勧められているのか」という点を率直に質問してみて、退職することに納得できるかどうか判断してみましょう。

⑵退職に応じる場合は条件を確認しよう

もし、退職することに決めた場合にも、退職に関する諸条件についての確認が必要です。具体的には、退職の時期、退職金の有無・金額、有給休暇の消化方法などです。退職金については、退職勧奨の理由によっては退職金の上積みを合意することもありますので、希望があれば交渉してみましょう。
また、離職票に記載する退職理由についても、会社の退職勧奨に応じる場合には「会社都合退職」とすることが一般的です(合意の上、「自己都合退職」とする場合もあります。)。離職票の交付を受けたら確認してみましょう。

⑶退職したくない場合ははっきりと伝える

退職勧奨をされたとしても、退職をしたくない場合には、お断りすることができます。
この場合にも、会社としては退職をして欲しいために、説得をしてくることもあります。もし、例えば退職金などの条件によっては退職して良いということであれば、会社側と交渉してみるのもひとつの方法です。
一方、どのような条件であっても退職するつもりは無いということであれば、はっきりとお断りをするべきです。口頭で伝えても結構ですが、日付入りの書面で差し入れるなどして、退職しない意思が固いことを確実に伝える方が良いでしょう。また、のちに争いになったときに証拠のひとつとなります。
したがって、書面などのなるべく形に残る方法で、はっきりとお断りの意思を伝えるようにしましょう。

退職勧奨に応じなかった場合

⑴そのまま働き続けることになる

退職勧奨に応じない場合には、雇用契約は継続となりますから、今まで通り働き続けることになります。
一方で、退職勧奨があったということは、当不当の問題は置いておくとしても、会社として何か理由があるはずです。その理由を解消することによって、会社・労働者双方にとってより良い状況に転換できることがあるかもしれません。
したがって、退職をしない場合にも「なぜ自分が退職を勧められたのか」という点についてはご確認頂くことをお勧めいたします。

⑵しつこい退職勧奨は違法になり得る

退職勧奨に応じない意思を明確に伝えた場合でも、会社が説得を続けることがあります。
ただし、説得の中でも、何回も呼び出したり、長時間拘束したり、複数人で取り囲んで圧力をかけたりなど、執拗な退職勧奨を繰り返す場合には、労働者の自由な意思決定を妨げる違法な退職勧奨として、損害賠償の対象となることがあります(このような場合を「退職強要」と呼ぶこともあります。)。
また、執拗な退職勧奨の結果、労働者が退職する意思表示をしたとしても、強迫や錯誤があると認められれば、退職の意思表示そのものを取り消すことができる可能性があります。
このような退職勧奨を受けた場合には、ぜひ弁護士にご相談ください 。

⑶退職勧奨に応じなかったことを理由とした不利益処分は違法

退職勧奨に応じなかった労働者に対して、配置転換・出向、降格などの不利益処分をすることは、自己退職に追い込む目的や報復目的といった不当な動機・目的に基づくものとして、違法・無効とされることがあります。

⑷解雇されることも――不当解雇の可能性も検討

退職勧奨の理由には様々なものがありますが、中でも①労働者に何らかの非があるとする場合(勤務態度不良、能力不足など)、②会社の財務的な都合の場合 には、後に解雇(普通解雇、整理解雇など)という手段がとられることがあります。
会社側からすると、適法に解雇ができる条件というのはなかなか厳しいということもあり、穏便に問題を解決する方法として、先に退職勧奨という手段をとるということが多いのです。
こういった理由から、退職勧奨が不成立に終わった場合には、会社側が次の手段として「解雇」を選択することがあります。
しかし、前述の通り、適法に解雇ができる条件というのはなかなかにシビアです。
退職勧奨を断ったあとに解雇されてしまった場合には、その解雇が違法・無効なものである可能性もありますので、ぜひ弁護士までご相談ください。

さいごに

以上見てきたように、退職勧奨は、それ自体は直ちに違法なものではありませんが、そのやり方・進め方によっては違法となることがあります。
退職勧奨に応じる場合、応じない場合のいずれにおいても、労働者側は自分で自由に意思決定をして良いということをぜひ覚えておいて下さい。
退職勧奨への対処法、または退職勧奨を断ったら不利益処分や解雇をされてしまった場合などについては、ぜひ弁護士までご相談ください。
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