営業職

みなし労働時間制を採用しているとの主張がされることが多い

みなし労働時間制を採用しているとの主張がされることが多い

取引先への外回り等が主であり、事務所で業務を行うことが少ないという勤務体系の場合、みなし労働時間制を採用していることを理由に残業代を支払わない使用者は多くあります。
みなし労働時間制は、実際の労働時間の長短にかかわらず、所定労働時間(または業務に通常必要とされる労働時間)労働したと扱う制度です。
みなし労働時間制には複数の種類がありますが、営業職に対して用いられることが多いのは、事業場外労働のみなし労働時間制であり、
①労働時間の全部又は一部を事業場外で労働した場合で
②使用者の具体的な指示管理が及ばず、労働時間の算定が困難なとき

が対象となります。
営業職の場合、大半は①の要件を満たすことになりますので、②の要件を満たすか否かが適用の分かれ目となっていきます。

行政通達では、②の要件を満たさない場合として、以下が示されています。
・数名のグループで事業場外の業務に従事する場合で、メンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
・事業場外で労働する場合で、無線やポケットベル等により随時使用者の指示を受けながら労働している場合
・事務所等で、訪問先・帰社時刻など当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに労働し、その後事業場に戻る場合
なお、以上は例示ですので、いずれかにあてはまらない限り、②の要件を満たすというものではありません。

事業場外労働のみなし労働時間制は、使用者が労働時間管理等を行うことが困難である場合に例外的に労働時間を擬制するものですが、スマートフォン等が普及した現在においては、使用者が労働者に定期的な連絡を求めたり、メール等で随時指示をするなどして、労働者の労働時間や業務状況を把握することが可能ですので、そのような場合には②の要件を満たさず、使用者が事業場外労働のみなし労働時間制を主張して残業代請求を拒むことはできない、ということになります。

収集すべき証拠

収集すべき証拠

時間単価について

雇用契約書、労働条件通知書、賃金規程、給与明細等があります。
賃金規程以外の多くがお手元にあるかと思いますので収集の苦労は少ないかもしれません。

労働時間について

タイムカード、勤怠システム記録、施設の入退室記録、デジタルツールを用いて業務報告を行ったデータ、社内で共有されているスケジュールデータ等があります。
デジタルツールが貸与品である場合、退職時に返却を求められるものと思いますので、自身の労働時間管理等に関する部分については事前にバックアップを作成しておくことが重要となります。