
「管理職は残業代がもらえないとは本当?」「これだけ働いても給与の上がらない中間管理職に悩みがある」「管理職の働き方を知りたい」このようなご興味のある方へ向けて、今回は管理職と残業代の関係性について解説します。
初めての方にもわかりやすく解説しておりますので、ぜひご一読いただけたらと思います。
とある「課長」のストーリー

「課長」のAさんは、連日深夜までB部長のための資料作りに追われています。
上司のB部長から振られた市場調査や取引先向けの資料作成を行うのは簡単なものではありませんでした。時間もかかり、内容も難しく、課長への昇進後は残業代も消えてしまいました。
もちろん、Aさんの営業部としての活動には自負があります。でも、予算をとってくるのはいつもB部長の手腕です。Aさんはときに、「こんなに働いているのに、残業代は出ないのだろうか」と思ってしまいます。一緒に資料作成を分担している部下のCさんには残業代が出るのに……。
管理職とは
法律上の管理監督者

入社からキャリアを積み重ね、中堅と呼ばれるようになると、他の従業員をまとめることもあるでしょう。与えられた仕事だけではなく、他の従業員に指示を出すなど、特に肩書や役職のない従業員とは異なる役回りを与えられることがあります。
このような立場には「課長」「部長」「マネージャー」などの肩書が与えられます。一般的には、このような肩書・役職を管理職と呼ぶことが多いです。皆さんの中には、管理職には労働基準法の適用がないという豆知識をご存じの方もいることでしょう。
ご紹介したストーリーでも、Aさんは「課長」の役職についています。一般的には、課の長という立場なのですから、管理職と呼ばれる立場でしょう。
もっとも、法律における「管理職」は少し異なるもので、わかりやすさを重視して言えば、「法律で保障された残業代、休憩・休日をもらえない人」という意味です(後で述べますとおり、例外は少々あります。)。
労働基準法は、割増賃金(残業代)を請求する権利について規定を置いていますが、法律上の「管理職」(以降では『管理監督者』と呼んで一般的に用いられる意味の管理職と区別します。)は、一般的なそれとは少し意味が異なります。法律の世界では、「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)を指し、これを管理監督者と呼びます。
Aさんは本当に残業代をもらえない管理監督者なのでしょうか。
肩書だけでは決まらない管理職(実態が重視される管理監督者の判断)
労働基準法にいう管理監督者は一般的用法の管理職とどう違うのかについて少しお話します。寄り道ではありますが、大事な問題です。
法律の書き方を見ると、「監督若しくは管理の地位」にある人が管理監督者にあたります。監督若しくは管理をしている肩書がある人ではありません。その実態を見て管理監督者か否かが判断されます。監督・管理の地位で実際に活動をしている人が管理監督者となるというのが、実務上の考え方です。
そのため、「課長」や「マネージャー」の肩書きがない方でも管理監督者にあたることがあります。逆に、「課長」や「マネージャー」の肩書があっても、その働き方や会社の中での役割などによっては、管理監督者に当たらないと判断されることがあります。
よく聞かれる「名ばかり管理職」の問題もこの点に関わるものです。
裁判例の考え方
裁判例において管理監督者は、
- 職責(労務管理上の使用者との一体性):その職務内容や責任の程度からみて、経営者と一体的な立場にあるといえるか。
- 時間管理(勤務時間の自主的・裁量的決定):自身の勤務時間を自律的、裁量的に決定できる勤務態様にあるか。
- 待遇(地位にふさわしい賃金・手当等):その地位にふさわしい賃金や手当などの待遇を受けているか。
という事情を総合考慮して判断されます。
これら各事情がすべて存在しなければ管理監督者に当たらないというものではありませんが、1から3までの要素がそろっていない人ほど、管理監督者ではないと判断されやすいでしょう。
上のAさんの例では、AさんはB部長の補佐という役割を果たしているにすぎない可能性があります。また、Cさんとお仕事を分担しており、役職の上下はあってもCさんと仕事内容に差がない可能性も見て取れます。
上の設例は例示ですし、細かい事情によって結論は変わることがあります。
しかし、このようなAさんには実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責及び権限を付与されていたということはできないというのも説得力のある説明だと考えられ、Aさんは管理監督者ではないのかもしれません。
管理職(管理監督者)に当たらない場合の重大な問題

管理監督者にあたる従業員の方には、労基法の第4章(「労働時間,休憩,休日及び年次有給休暇」)、第6章(「年少者」)および第6章の2(「妊産婦等」)で定める「労働時間,休憩及び休日」に関する規定の適用が除外されます(労働基準法41条柱書)。
裏返して言えば、管理監督者ではない人には、時間外労働に対する残業代が支払われなければなりません。労働基準法労働時間に関する規定が適用されるということは、その労働時間が制限されることになりますし、通常の労働者同様の権利を主張できるということなのです。
ただし、労働基準法37条の定める割増賃金(残業代)のうち深夜労働に対するものは適用除外の対象外とされています。また、年次有給休暇や育児介護休業法に関する規定には適用除外の対象になりません。
残業代をカットされていたAさんには未払いの残業代を請求する権利があるかもしれません。
細かい事情をよく検討する必要

ここまで管理監督者に当たるか否かと管理監督者ではない方がどのように扱われるかをご説明してきました。
個別具体的な判断は、一般の方には難しいことが多いことでしょう。
労働事件について経験・実績のある弁護士にご相談されることも、この問題に直面したときには効果的でしょう。
まとめ

ここまで管理職と残業代の関係についてお話してきました。法律上の「管理職」にあたる管理監督者には、権限と責任、労働時間時間に裁量があることなどの要素が必要です。
管理職と呼ばれていらっしゃる方の中には、法律上の「管理職」ではない方もいます。このような方には、労働基準法により認められている、時間外労働の対価としての残業代を請求する権利があることが多いでしょう。
専門家へのご相談も視野に入れて入れることも一つの解決策です。
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