紛争の内容

ご依頼者の方は、勤務先の会社から解雇を告げられました。ご依頼者の方としては納得がいかないお気持ちをお持ちでしたが、解雇に至る経緯を確認したところ、会社側には解雇の理由として主張し得る事情が存在しており、法的に見れば解雇が有効と判断される可能性が相応に高い事案でした。訴訟を提起しても、地位確認が認められる見込みは乏しい状況にありました。

交渉・調停・訴訟等の経過

ご依頼を受けるにあたり、まずご依頼者の方に対し、本件の見通しが厳しいこと、敗訴のリスクがあることを率直にご説明しました。そのうえで、ご依頼者の方のご意向を確認し、まずは交渉による解決を目指すこととしました。
会社に対しては、解雇に至る手続が適切に踏まれていたか、注意や指導、改善の機会が十分に与えられていたか、解雇という最も重い処分を選択する必要があったのかといった点を具体的に指摘し、金銭による解決を提案しました。しかし、会社は解雇の有効性に自信を持っており、交渉の段階では一切の支払いに応じないという姿勢を崩しませんでした。
そこで、ご依頼者の方と協議のうえ、訴訟を提起する方針としました。訴訟においては、解雇理由とされた事実の評価について争うとともに、仮にその事実が認められるとしても、解雇という処分は重きに失し、社会通念上の相当性を欠くことを主張しました。あわせて、会社側が主張する事実の裏づけとなる客観的な資料が十分でないことを指摘しました。
訴訟の進行に伴い、裁判所から和解の勧試がなされ、双方で条件の協議を行いました。

本事例の結末

協議の結果、会社が解決金として給与2か月分に相当する金額を支払うことで和解が成立しました。
交渉の段階では一切の支払いに応じない姿勢であったことを踏まえると、訴訟という手続に進んだことが、結果として一定の経済的解決を得ることにつながりました。

本事例に学ぶこと

労働事件では、法的な見通しが当初から厳しい事案も少なくありません。しかし、見通しが厳しいことと、何も得られないこととは同じではありません。訴訟で勝訴判決を得られるかどうかと、手続のなかで一定の解決を得られるかどうかは、別の問題だからです。
本件のように、交渉の段階では会社が強硬な姿勢を崩さなかったとしても、訴訟を提起することで、会社側も紛争の長期化や判断のリスクを現実の問題として受け止め、態度を変えることがあります。裁判所の和解勧試という場が設けられることも、解決を後押しします。
もっとも、見通しの厳しい事案で訴訟に進むかどうかは、慎重な判断を要します。大切なのは、法的な見通しを正確に把握したうえで、それでもなお手続を進める価値があるかどうかを検討することです。無理だと思われる事案であっても、やってみる価値がある場合があることを、本事例は示しています。
解雇を告げられてお困りの際には、ご自身で結論を出してしまう前に、一度弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

弁護士 遠藤 吏恭