働き方のひとつとして、在宅勤務が(一時的にせよ)導入された企業も多いことと思われますが、その扱いは様々のようです。
さて、「在宅勤務になったら残業代が出なくなった」というご相談を頂くことがありますが、この理由のひとつとして、会社が「事業場外労働に関するみなし労働時間制」(労働基準法38条の2)を採用したことが考えられます。
事業場外労働に関するみなし労働時間制とは、会社のオフィス等以外で労働する場合に、実際の労働時間の算定が困難な場合に、予め決まった時間分労働したものとみなす、という制度です。外回りの営業職等で主に活用されています。
事業場外労働に関するみなし労働時間制のポイントは、
⑴使用者の具体的な指揮監督が及んでいないこと
⑵労働時間を算定することが困難なこと
にあります。
これを在宅勤務に限って整理し直すと、次のように考えられています(参考:平成16年3月5日基発第0305003号)。
①当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
②当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
③当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと
①については、もし「仕事専用の部屋を確保しなさい」という指示がされているとすると、制度の要件を満たさない可能性があります。
②については、例えば「勤務時間中は常時ウェブ会議をオンにする」「常にチャットで通信できる状況にしておく」等の状況であれば、制度の要件満たさない可能性があります。
③は、業務の目標や期限などの基本的な事項のみならず、細かい指示までなされていたかどうかで判断します。
つまり、自宅=会社外で勤務しているからといって、必ずしもこの事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されるとは限らないのです。
ご自身の在宅勤務の残業代が出ない理由を今一度お確かめの上、もし疑問点があれば、ご自身で会社に確認するか、一度弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
なお、やるべき業務の遂行に通常必要とされる時間が、所定労働時間よりも長い場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間分、労働したものとみなすとの規定もあります(法38条の2第1項但書)ので、長時間労働とならざるを得ないのにその分の「残業代」が出ない場合にも、一度弁護士までご相談頂くことをおすすめいたします。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、16名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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