近年、ハラスメントに対する社会的な注目が高まっており、パワーハラスメント・セクシャルハラスメント(以下、パワハラ・セクハラと略します。)を理由とした懲戒処分のニュースも度々耳にするところです。
 
 ところで、懲戒処分は、ざっくりとしたイメージとして、①懲戒処分について根拠となる就業規則等の定めがあること、②定められた懲戒事由に該当すること、③具体的な事情のもと懲戒処分が相当であることといった3つの要件が満たされない場合には、無効とされています。

 したがって、パワハラ・セクハラがあった場合であっても、就業規則等に懲戒処分の根拠となる条文が置かれていない限り、懲戒処分をすることはできないということになります。
 そうとはいえ、厚生労働省の示しているモデル就業規則でも明確にパワハラ・セクハラは禁止されていますので、すでに多くの会社においては就業規則等に定めがあるものと思われます。
 そのため、パワハラ・セクハラを行った労働者に対して、けん責(始末書)や減給の懲戒処分を行って問題となることは、さほど多くはありません。

参照:厚生労働省HP モデル就業規則
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html

 現実に多く問題となるのは、パワハラ・セクハラがあった場合に、それにより懲戒解雇をしたというケースです。
 懲戒解雇とは、会社が労働者に対して行うことのできる懲戒処分のなかでも最も厳しい処分です。したがって、上記③の具体的な事情のもと懲戒処分が相当であるか、という観点の判断も、当然大変厳しいものとなります。
 過去の裁判例では、大学教授であった労働者が、部下に当たる講師や研究員らに対して様々なパワハラ・セクハラを行ったこと自体は認定されたものの、各ハラスメント行為については悪質性が高いとは言い難く、被害者の就労制限には至っていないこと、当該労働者に過去の懲戒処分歴が無いこと等も合わせて考えると、懲戒解雇処分は不相当であるとして、懲戒解雇は無効であるとしたケースもあります(前橋地判平成29年10月4日)。

 パワハラ・セクハラ等のハラスメント行為はあってはならないことではありますが、それを戒めるのに必要な処分が懲戒解雇だけとは限りません。まずはひとりひとりの心遣いと社内における教育・指導等を通して、ハラスメントを無くしていくことが重要であり、その次の手段のひとつとして、けん責等のより軽い懲戒処分を行うことが考えられます。
 ご自身の懲戒解雇処分(あるいは諭旨退職処分ということも多くあります。)について「重過ぎるのではないか?」と思われる場合は、ぜひ一度弁護士までご相談ください。グリーンリーフ法律事務所では、労働問題専門チームの弁護士がご相談者様のご事情を詳しくお伺いして、適切なアドバイスをいたします。
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