営業職では、営業手当やみなし労働時間制により残業が認められない、残業代を請求しても支払われないと思っていませんか?そうではない場合も十分にありますので、この記事ではそのことについて解説していきます。

営業職でも残業代は請求できる

営業職には残業代は出ないと勘違いされていませんか?
営業職であっても、残業をすれば、当然残業代をもらう権利があります。

営業職だと残業代が請求できないと誤解される理由


会社から以下のようなことを理由に残業代は出ないと説明されていませんか?

・「歩合制であれば、そもそも残業代は出ないから」
・「残業代の代わりに営業手当を支払っているから」
・「外回りの営業に残業はつかないから」
・「テレワークに残業はつかないから」

会社からこのような説明を受けた覚えがあるのであれば、未払いとなっている残業代があるかもしれません。

歩合給(インセンティブ)が支払われている場合


報酬の一部に歩合給制が採用されているからといって、残業代の支給をしなくてよいということにはなりません。

歩合給は成果に対する報酬です。
一方、残業代は労働時間に対する報酬です。
このように、それぞれ元々の性質が異なりますので、歩合給制であったとしても、時間外勤務が発生していれば、別途残業代の支払いが必要となります。

仮に会社の言うように、歩合給の中に残業代を含むとされていた場合には、歩合給に含まれる歩合の賃金と残業代とが明確に区別されていなくてはなりません。
より具体的には、以下3つが必要です。
①区別を明記している根拠(雇用契約書や就業規則等)
②みなし残業代の金額が明確であること
③みなし残業代が想定する時間を超えて残業をした場合に差額の支払いがされていること

上記①~③を満たしていなければ、その歩合給は残業代ではありません。

営業手当が支払われている場合


営業手当が支給されていると、それを残業代と理解する人もいるようです。
これは会社が、「営業手当=固定残業代(みなし残業代)」という認識で支給しているためと思われます。

そこで、営業手当が支払われている場合も、それが残業代と明確に区別されていなければなりません。
より具体的には、以下3つが必要です。
①営業手当が残業代として支払われることが明記されている(雇用契約書や就業規則等)
②営業手当の金額が基本給と明確に区別されている
③営業手当が想定する時間を超えて残業をした場合に差額の支払いがされていること

上記①~③を満たしていなければ、その営業手当は残業代ではありません。

外回りにみなし労働時間制が適用されている場合


外回りの営業や出張を行う場合、会社が従業員の労働時間を把握するのが難しくなるため、そのような業務に関しては、「事業場外みなし労働時間制」を適用して、一定時間の労働をしたとみなすことができます。
しかし、外回り営業であれば必ず「事業場外みなし労働時間制」が適用されるわけではありません。社外での従業員の労働時間を把握するのが難しいと客観的に認められる場合に限られます。
具体的に言えば、以下のような場合には、事業場外みなし労働時間制の適用は困難かと思われます。

・社外での業務に、管理職等が同行している場合
・社用携帯などにより会社の指示を受けた状態で社外業務を行う場合
・訪問先や帰社時間などの社外での業務内容に会社から具体的指示がある場合 など

例えば、社用携帯などによって逐次会社から業務指示がなされており、これに従って外回り営業が実施されているような場合は、労働時間の把握が困難な状況に当たるとは言い難いと思われます。
そのため、このような場合ですと、「事業場外みなし労働時間制」の適用が認められず、別途残業代を請求できる可能性が高まってきます。

テレワーク(自宅等)で行った営業業務がある場合


営業をしていると、どうしても休日や勤務時間外に顧客対応をしないといけないこともあり得ます。
また、勤務時間内に業務が終わらなかったり、残業が禁止されていたりするために、持ち帰り残業(隠れ残業)を行わなくてはいけないこともあるでしょう。

この場合、テレワーク(自宅等)で行った業務であっても、会社から明示または黙示の指示があった場合や、過剰な量の業務が割り振られており時間外で就労することがやむを得ない場合には、残業代を請求できる可能性があります。

会社に対して残業代を請求する方法

会社に対し、残業代を請求する方法は以下のとおりです。

①会社と話し合い(交渉)をする
②労働基準監督署に相談(申告)する
③労働審判を申し立てる
④訴訟を提起する

上記方法はいずれも個人だけで対応可能ではありますが、早期解決を目指すのであれば、やはり弁護士に相談したほうがよいでしょう。

①会社との話し合い(交渉)

労働審判や訴訟にまで発展すると、労働者も会社も、費用や時間、労力を要するため、交渉で決着することは双方にメリットがあります。
そのため、話し合い(交渉)で決着するケースも多くあります。

②労働基準監督署への相談(申告)

無料で利用ができますし、具体的なアドバイスを得られるため、自身で残業代請求に関する情報を集める手間が省けます。
もっとも、労働基準監督署は会社に対し、是正するよう指導や勧告してくれることはあり得ますが、あなたの代わりに証拠を集め、残業代を請求してくれるわけではありません。

③労働審判

労働審判は、裁判所を利用する手続きの一種で、通常の裁判に比べて短期間での解決が期待できます。

裁判官1名と労働審判官2名の計3名で構成された労働委員会が、当事者双方の言い分を聞き取り、可能であれば調停 (話し合いによる解決)を勧め、これが難しい場合には審判(裁判所の判断)で決着をつけます。
審判内容に不服があれば2週間以内に異議申立てをすることができます。異議申立てがされると、通常の訴訟に移行します。

④訴訟

話し合いや労働審判、労働基準監督署が介入しても解決できなかった場合の最終手段です。
会社側が徹底的に争うようであれば、確定判決を得られるまで1年以上かかってしまうということもあり得ます。
もっとも、訴訟であっても、判決に至る前に、裁判所から和解を勧められるケースがほとんどで、和解によって決着するケースも多くあります。もちろん、和解による解決であっても、効力は判決と一緒です。

ご相談 ご質問

営業職だから残業代請求できないということはありません。
残業代に関する会社の説明に少しでも疑問があれば、まず弁護士に相談にいきましょう。
またあわせて、すぐにでも残業代請求が行えるよう(備えあれば憂いなしですので)、早いうちから証拠集めをしておくことをおすすめいたします。

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また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 小野塚 直毅
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