「サービス残業をしているにもかかわらず、残業代がもらえない」
「今の職場を辞めるタイミングで、これまでもらっていなかった残業代を請求したい」
そのように主張したいが、会社との関係を悪化させたくない、請求が認められるのか等不安に思い、残業代請求をすることに二の足を踏む労働者がいるかと思われます。
残業代は、法律上労働者がもらうべき賃金です。
このページでは、上記のようなお悩みを持たれる方向けに、残業代の相談先がどこにあるのか等について専門家が解説するページになっております。
主な未払い残業代の相談先
全国には残業問題に限らず、様々な労働問題の悩みを抱えている方向けの相談先が多々ございます。以下では、代表的な相談先についていくつかご紹介いたします。
1 労働相談ホットライン
違法な時間外労働・過重労働による健康障害・賃金不払残業などの労働基準関係法令に関する問題について、専門知識を持つ相談員が、法令・裁判例などの説明や各関係機関の紹介などを行う電話相談のことを指します。
日本全国の労働組合の中央組織である「全国労働組合総連合(全労連)」により運営されてています。
電話相談は、労働者・使用者に関わらず誰でも無料で、全国どこからでも利用できるのがメリットとして挙げられます。
2 労働基準監督署
厚生労働省の出先機関である、企業などの使用者が労働基準関係法令を遵守しているか監督する機関を指します。
匿名又は実名で職場の労働基準法違反の行為について通報することにより、労働基準監督署が会社に指導勧告を行ったり、立ち入り調査を行ったりする場合がございます。
また、悪質なケースでは経営者らが刑事的処罰を受けることもございます。
3 総合労働相談コーナー
厚生労働省により、全国の労働局や労働基準監督署内に設置されている相談窓口を指します。
未払い残業代だけでなく、解雇、雇い止め、不当な賃金引き下げ、不適切な募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、あらゆる分野の労働問題について相談することが可能というメリットが挙げられます。
各種類の相談は、電話もしくは面談で行うことができます。
4 法テラス
国が設立した法律支援団体をいい、経済的に余裕のない人向けに弁護士が各種の法律相談を受け付けております。
もちろん未払い残業代についても相談することが可能であり、費用については初回無料のケースが多く、着手後の弁護士費用を立て替えてもらえるというメリットがございます。
もっとも、相談を聞いてくれる弁護士はあくまで法テラスの「当番弁護士」ですので、必ずしも未払い残業代などの労働問題について経験豊富な弁護士ばかりではないので、注意が必要です。
5 弁護士
全国各所には労働問題を専門にしている法律事務所や労働問題に強い弁護士が所属する法律事務所があり、経験豊富な弁護士から残業代問題等のアドバイスをもらえます。
また、弁護士に依頼をすることで、代理人として会社と交渉を行い解決に向けて動いてくれるので精神的負担を軽減してくれるメリットがございます。
残業代問題について相談した方が良いケース
自身が抱えている問題が、残業代問題にあたるのかお悩みの方向けに、相談した方が良い代表的なケースをいくつかご説明いたします。
1 そもそも残業代が支払われていない
法律上、原則1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えたもの(時間外労働)であれば、会社は割増賃金を支払う必要がございます(労働基準法32条1項)。
このような残業代・割増賃金が支払われていない場合、労働者は、会社に対し、残業代・割増賃金の支払を請求することができます。
労働基準監督署等に通報・相談すれば基本的には対応してくれますが、実際に未払残業代や割増賃金を請求する場合には、弁護士でなければ代理人として代わりに請求の手続をしてくれませんので、弁護士に依頼するメリットはこの点にございます。
2 「36協定」を締結していない・届出していない
「36協定」とは、労働基準法36条に基づく労使協定で、会社が法定労働時間を超えた残業(時間外労働)を命じる場合に必要となるものを指します。
つまり、36協定を締結しなければ、法定労働時間を超えた残業をさせることはできません。
36協定を締結することにより、原則として月45時間・年360時間の上限の範囲内で残業させることが可能となります。もっとも、一部時間外労働の上限について適用が猶予等されている事業等もございます。
会社が36協定の締結・届出をせずに、労働者に時間外労働をさせていた場合、違法にあたりますので、このような場合には、先ほどご説明しました相談先に相談することをオススメします。
3 残業時間が36協定の上限を超えている
先ほどご説明したとおり、36協定を締結することにより、原則として月45時間・年360時間の上限の範囲内で残業させることが可能となります。
また、特別条項付きの36協定を締結することにより、特別な事情がある場合には、残業時間の上限を上げることができます。
この場合の残業時間の上限については、以下のとおりです。
・時間外労働につき、年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計につき、月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計につき、2~6ヶ月平均が全て月80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができる回数につき、年6ヶ月まで
したがって、残業時間の上限を超えて残業をしている場合には、会社からの残業命令は違法になります。
未払残業代を請求する手順
会社に対して未払残業代を請求する際のステップについて、以下のとおりご説明いたします。
1 証拠集め
まず、未払残業代がいくらあるのかを把握するためにも証拠が必要です。
なぜなら、残業代請求するには、労働者側に残業時間を立証する責任があるからです。
労働時間を把握するための証拠については、主に以下のようなものが挙げられます。
・タイムカード
・パソコンのログイン記録
・会社のパソコンから送信したメール
・業務日報
など
もっとも、これらの証拠がお手元にない場合には、会社に対して資料開示請求をすることができます。
なぜなら、会社には、労働者の労働時間を適正に把握する義務があり、労働時間を確認・記録すべきとされています。また、会社は、労働関係に関する重要な書類を3年間保存する義務がございます。
2 会社に請求し、時効を中断させる
未払残業代を請求する権利は、法律上3年で時効により消滅してしまうので、まずは時効を中断させなくてはなりません。
時効を中断させるためには、通常、会社に対して未払残業代の支払いを求める「催告」を内容証明郵便で送付する方法を採ります。
そして会社に内容証明郵便が送達されてから6ヶ月以内に訴訟を提起すれば時効は中断します。
言い換えれば、内容証明郵便を送付することにより訴訟を提起しなくても催告から6ヶ月経過するまで時効を延期することができます。
まとめ
残業代が支払われないことでお悩みの労働者向けに様々な相談窓口がございます。
お手元に未払残業代を証明する証拠がなくても、会社に対して資料開示請求をすることができますので、まずは相談窓口に相談してみることをオススメします。
また、時効との関係で残業代請求はできるだけ迅速な対応が求められますので、代理人として対応してくれる弁護士に相談してみるのもよろしいかと思います。
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