
当初の想定よりも後ろ倒しになっていますが、労働基準法の改正について引き続き議論が継続しています。
労働基準法が改正された場合、企業側では新たな規制の対応に取り組むということになりますが、労働者の目線では労働環境が変化するということを意味します。
今回は、労働者から見た労働基準法改正について解説をしていきます。
概念的な検討課題

労働基準法の改正にあたっては様々な検討課題が取り上げられ議論がなされていますが、概念的なものとしては労働基準法における「労働者」と「事業」の在り方について検討がされています。
「労働者」について
現行の労働基準法は「労働者」を「職業の種類を問わず、事業または事務所…に使用される者で賃金を支払われる者」と定義しています。
他方で、現在ではインターネット技術の発達に伴う業務の多様性により、上記の定義には当てはまらず、雇用という形態をとらないものの、上記の定義に該当する労働者と立場は大きく変わらないという働き方をしている人が多く存在します。
改正議論の中ではそのような人達を引き続き「労働者」の枠の外においておくのかという観点から検討が進められているため、将来的には「労働者」の概念が広くなる可能性があります。
「事業」について
現行の労働基準法は「事業」ないし事業場を単位として適用されるという仕組みをとっています。
他方で、現代ではテレワークの普及が進み必ずしも労働者がみな事業場で働いているわけではないという状況となっています。
改正議論での中では物理的な事業場を離れた適用単位の必要性について指摘がなされているため、将来的には労働基準法の適用単位として事業以外の単位に改められる可能性があります。
具体的な検討課題

労働基準法の改正議論において具体的な検討課題として挙げられているもののうち実際に改正ないし見直しとなる可能性が高いものについて触れていきます。
週44時間特例の廃止
現行の労働基準法は労働時間の上限を1日8時間・週40時間と定めていますが、小売業等の一定の業種かつ10人未満の労働者を使用する事業場については週44時間までの労働時間を特例として認めています。
しかしながら、現在週44時間特例を利用している事業場は極めて少ないという実情から同特例は廃止される方向で議論されています。
これまで週44時間特例のもとで勤務していた労働者についてはこれまでと同じ勤務をしていても残業が発生することになります。
14日以上の連続勤務禁止
現行の労働基準法は、労働者に毎週少なくとも1日の休日を与えることを原則としていますが、4週間を通じて4日以上の休日を与えるという方法も許容しています。
これによれば連続勤務の前後に4日の休日を設定することで48連勤されることも法的には可能という状況でしたが、連続勤務は労働者の精神状態に大きな負荷を与えるという側面があるため、14日以上の連続勤務を禁止する方向で議論が進んでいます。
改正の前後で連続勤務の上限が大きく変わるため、かなりの連続勤務が常態化しているという職場については大きな是正がされることが期待できます。
法定休日の特定

現行の労働基準法は労働者に毎週少なくとも1日の休日を与えることを定めていますが、その1日を特定することまでは求められていません。
毎週決まった休日があるということは労働者の休息や生活リズムにとって有用であり、また、休日労働等の区別の関係で法定休日を明確しておくべきという観点から、法定休日を予め特定することを条文化するという方向で議論が進んでいます。
法定休日が特定される場合、事前の振替等をせずにその日に勤務を行った場合には休日労働という扱いになりますので、その分の残業代が発生するということになります。
勤務間インターバルの導入
現行の労働基準法は勤務間インターバルに触れておらず、他の法律において勤務間インターバルの設定について使用者側に努力義務が課されているに過ぎないというのが現状です。
改正銀論では労働者のワークライフバランスについて労働時間の上限規制のみで対応することは不十分であるとの考えから基本的な勤務間インターバルを11時間とする案などが浮上しています。
勤務間インターバルは退勤から出勤までの時間を管理するものであり、勤務間インターバルが法律上導入された場合にはインターバルを確保するため労働時間(残業時間)が減少する等の効果が期待できます。
つながらない権利
勤務時間外においても上司や顧客から突発的な対応を求められ、やむを得ず対応するという場面はままあります。
外国ではつながらない権利を法制化しているケースもあり、改正議論では一定のルール化を求める指摘がなされています。
つながらない権利についてはまずはガイドラインを策定する段階から進んでいくことになりそうですが、これが実現すれば勤務時間外に仕事のことで時間を割かれることがなくなるかもしれません。
有給休暇の賃金算定方式の統一

現行の労働基準法は有給休暇取得時の賃金算定について、労働基準法上の平均賃金、所定労働時間勤務した場合に支払われる通常の賃金など3パターンの算定方法のいずれかで支払うよう定めています。
改正議論において日給制や時給制の労働者については算定方法により有給休暇取得時の賃金に大きな差が出る可能性があることが指摘されており、今後は算定方法を所定労働時間勤務した場合に支払われる通常の賃金に統一する方向で議論が進んでいます。
有給休暇取得時の賃金算定方式が統一された場合、勤務先ごとに賃金の取り扱いが異なるという心配をすることはなくなるはずです。
副業・兼業の割増賃金算定ルールの変更
現行の労働基準法は労働者が副業や兼業を行う場合、使用者が異なる場合についてもそれぞれの労働時間を通算して割増賃金を支払うべきことを定めています。
改正議論において、昨今、副業や兼業を行う労働者が増加している一方、現行の方法では使用者側の管理の負担が大きく副業や兼業に使用者側が消極的になっているとの指摘があり、割増賃金の支払いという観点においては労働時間の通算を求めないという方向での議論が進んでいます。
労働者が副業や兼業を行う際の使用者側の負担が一部軽減されるとなれば使用者として労働者の副業や兼業の緩和に動く可能性があり、労働者にとって副業や兼業がしやすい環境となるかもしれません。
まとめ

今回は、労働者から見た労働基準法改正について、労働基準法改正議論の展開を踏まえた解説をしてきました。
労働基準法が改正されることにより労働者の労働環境はより今の時代の働き方にフィットした内容になるものと思われます。
労働基準法の改正については現在も議論が継続されており、その中で軌道修正がなされる部分が出てくることは否定できませんが、おおよそ上記のとおり進むのではないかと予想されています。
今後、新しい情報が公表されましたらその際にまたご紹介をさせていただきます。
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