
「業務改善計画というものを示されている」「自身の仕事について見直しを会社から迫られている」「PIPという言葉を聞いたことがない」「成果が出せなくて解雇されるかもしれない」このような場面に遭遇した方やそれらについて知りたい方に向けて、PIP(業務改善計画)とは何か、及びこれと解雇の関係について解説します。
初めての方にもわかりやすく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
PIPとは

先にお示ししたPIPとは、PIP(Performance Improvement Plan)、業務改善計画と言われるものです。
通常、労働者にはそれぞれの仕事や求められるパフォーマンスがあります。求められるパフォーマンスには、従業員であれば当然要求されるものもあれば、無理難題ではないかとも思われるようなパフォーマンスもあります。
PIPの未達成と解雇の問題

略称を用いてご説明していますが、PIPとは、会社や上司から業務について「このような水準・段階で今よりも良い成果を出してほしい」と求められることです。
期待されているのであればうれしいと思う方もいるかもしれませんが、高すぎる要求であるのに、これを達成できないと、会社や上司の求める水準を下回る従業員であるとみられてしまうかもしれません。
ときには、上司から示された業務改善計画を達成できなかったことを理由に解雇を言い渡されるケースもあります。また、従業員を解雇する口実としてPIPの未達成が挙げられるケースもあるところです。
労働法上の義務

PIPは、結局のところ上司ないし会社からの職務命令の一つと理解されています。従業員は、労働契約上の義務として、求められた業務の改善のために努力することが求められます。そのため、PIPを示されながら、一切改善の努力をしないということになれば職務命令に違反していることになります。
一方で、労働契約はあくまで従業員に労務の提供(仕事をすること)を求めるにすぎず、業務が改善されていること(仕事の結果)を義務付けてはいません。商品を売るために最高の努力をしても、従業員にはおよそどうすることもできない事情によって努力に見合ったとおりに商品が売れないことは往々にして起こることだからです。
そのため、PIPが示されたとしても成果が出なかったことを理由に、直ちに、上司や会社の命令に違反したということにはなりません。
解雇の有効性とPIP

では、PIPを示されたがこれを達成できなかったという理由で解雇されてしまうことはあるのでしょうか。
PIP(業績改善プログラム/改善計画)の目標が未達成であることを理由とした解雇が不当ではないかと争われる場合、単に「基準に達しなかった」という事実のみで正当化されるものではなく、労働契約法第16条に基づく「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が以下の観点から厳格に判断されるとされています。
目標設定の合理性
PIPで設定された課題が、同種労働者と比較して過大(達成困難)であったり、抽象的すぎたりしないかが重要です。対象者の能力や問題点に合わせた「オーダーメイド」の課題設定でなければ、改善意欲自体を疑われ、解雇ありきの対応とみなされる可能性があります。
例えば、一度PIPを受けて改善に成功した実績があるにもかかわらず、再度技術職の従業員に対し「畑違い」のコスト削減業務を課題として課し、未達成を理由に解雇することは不合理と判断されます。また、同種労働者と比較して過大な要求を課すPIPは、達成できなかったとしても解雇を正当化する有利な事情にはなりません。
改善の機会と指導の適切性
単に期間を定めて合否を判断するだけではなく、期間中に適切なフィードバックや改善のためのサポート、日常的な指導が行われていたかが重視されます。十分な指導がないまま能力不足と評価することは、解雇が認められない一因となります。
改善の見込みと程度の判断
課題をすべてクリアできなかったとしても、ある程度の改善傾向や努力が見られる場合には、改善の余地がある(改善不可能とは言い切れない)と判断され、解雇が否定される傾向にあります。解雇が認められるためには、改善の見込みがないと言える程度に達している必要があります。
解雇回避努力の有無
そもそも、直ちに解雇するのではなく、職責の変更、降格、あるいは配置転換の可能性などを検討したかどうかが判断材料とされます。これらの検討をせずに一足飛びに解雇を行うことは「行きすぎ」と判断されるリスクがあります。
運用の目的
PIPが実質的に「退職に追い込むための手段(解雇の方便)」として利用されていると判断された場合、解雇の正当性は否定されます。特に、退職勧奨とセットで運用されたり、最初から結論(辞めさせること)が決まっているような運用は厳しく評価されます。
まとめ

以上のように、業務の改善を求められてこれを達成できないとしても、直ちに解雇が有効になるとは限りません。
懲戒解雇などのように会社のルールに反したわけではないため、解雇の正当性が疑わしいケースも多くあります。なお、このような場面で安易に退職勧奨に応じないことにも注意していただきたいです。
それぞれの解雇が不当解雇なのではないかという問題は、非常に難しい問題です。詳細な事情を聞き取ったうえで、専門家が判断して、今後の対応を考えることが非常に重要です。
そこで、解雇をされてしまった方は、ぜひ一度弁護士に相談をされるのが良いでしょう。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。








