紛争の内容
依頼者の方は、試用期間満了のタイミングで会社から本採用を拒否されました。
会社側は試用期間中の勤務態度や能力が基準に達していないとして本採用拒否(雇止め)を主張しましたが、こちら側は、会社からの十分な指導や改善の機会がないままの一方的な本採用拒否は、解雇権の濫用(不当解雇に相当)であると主張して争いとなりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
本件では、まず会社に対し、本採用拒否が不当解雇に相当するとして交渉を持ちかけました。
会社は、試用期間中の本採用拒否は通常の解雇よりも裁量が広く認められること、および十分な指導を行ったことから不当解雇には当たらないと主張しました。
これに対し、こちらからは、これまでのメールの履歴などの客観的な資料を詳細に分析し、会社側からの具体かつ十分な指導が尽くされていなかったこと、また、改善の機会も十分に与えられていなかったことを強く主張しました。
この主張に基づき、本採用拒否は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは言えないとして、粘り強く交渉を続けました。
本事例の結末
交渉の結果、会社側が不当解雇の可能性を考慮し、和解金(解決金)の支払いを受けることで事案は解決に至りました。
依頼者の方は、紛争を長期化させることなく、金銭的な補償を得ることができました。
本事例に学ぶこと
試用期間中の本採用拒否は、通常の解雇よりも会社の裁量が広く認められる傾向にありますが、全くの自由裁量ではないという点が重要です。
企業側には、試用期間中に労働者に対し適切な指導を行い、改善の機会を与える責任があるため、本事例では、会社からの指導が不十分であったことを示すメールの履歴などの客観的な証拠を収集し、論理的に構成したことが、交渉を有利に進める大きな要因となりました。
また、不当解雇と判断される可能性を示唆しつつも、訴訟ではなく交渉による解決を追求した結果、早期かつ現実的な金銭的解決が得られました。
労働問題をめぐる紛争では、交渉・労働審判・訴訟というようにいくつかの方法がありますが、どういった手続きで進めることが良いかを検討することが大切です。
弁護士 遠藤 吏恭







