紛争の内容
会社勤務をされていたご依頼者の方が、会社から能力不足を理由に普通解雇を言い渡されました。
普通解雇は懲戒解雇に比べて、会社側が適切な手続きを踏んでいれば認められやすい傾向にあります。本件の主な争点は以下の点でした。
①雇用時に求められた能力水準と採用時の状況
②就業期間中、会社側から十分かつ適切な指導があったか
③ご依頼者の方の具体的な勤務態度や業務成績
会社は、細かな指示や指導の履歴をメールなどで記録として残しており、訴訟になった場合はご依頼者の方が敗訴する可能性が相応程度あった事案でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
本件では、会社が指導記録などを保持している可能性が高く、訴訟での敗訴リスクがあったため、労働審判の手続きを利用して和解での解決を図ることがポイントとなりました。
実際に労働審判へ申し立てを行い、手続きの中で会社に対してご依頼者の方の主張をしっかりと展開しました。その際、訴訟も辞さないという強い姿勢を示したところ、会社側が和解に応じる意思を見せました。
本事例の結末
労働審判の結果、会社との間で賃金の3ヶ月分を支払う旨の和解をすることができました。
労働審判という迅速な手続きを選択したことにより、訴訟へ移行するよりも早期に紛争の解決を図ることができました。
本事例に学ぶこと
本事例は、敗訴のリスクがある事案において、労働審判という手続きを効果的に活用することで、迅速かつ合理的な和解を勝ち取ることができたという点で重要です。
まず、普通解雇においては、解雇の有効性が、雇用契約時に想定されていた能力水準、会社による適切な指導の有無、およびご依頼者の方の勤務実態によって総合的に判断されます。
本件のように会社側が指導記録などの証拠を豊富に保持している場合、訴訟では不利になる可能性があるため、法的な見通しに基づいて早期の和解を目指すことが適切な戦略となります。
次に、労働審判は、裁判官と労使の専門家である労働審判員が関与し、原則3回以内の期日で審理を終結させることを目指すため、訴訟に比べて非常に迅速に解決を図ることができます。
そして、和解交渉においては、たとえ不利な要素があったとしても、徹底抗戦の構えを見せ、訴訟へ移行した場合の会社側の負担(時間、コスト、リスク)を認識させることで、和解条件を有利に引き出すことが可能となります。
弁護士 遠藤 吏恭







