紛争の内容
トラック運転手として勤務されていたご依頼者の方が、業務中の事故や遅刻・欠席を理由に会社から突然解雇を言い渡された事案です。会社側はこれらの不備を重く受け止め、解雇は妥当であると主張していました。
しかし、詳しく事情を伺うと、事故等の事実は認められるものの、即座に解雇を選択することは客観的にみて厳しすぎる側面があり、解雇権の濫用にあたる可能性が高いと考えられました。また、運転日報を精査したところ、未払いの残業代も発生していることが判明したため、解雇の無効と併せて残業代の支払いも求めることとなりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
受任後、まずは相手方会社に対して解雇の撤回と残業代の支払いを求める交渉を開始しました。当初、会社側は「解雇は正当であり、残業代も支払う必要はない」と一切の支払いを拒否する強硬な姿勢を示していました。これに対し、当職は「交渉で進展がないのであれば、速やかに訴訟へ移行する」という断固たる方針を伝えました。
これを受けて相手方会社も弁護士を立て、弁護士同士での協議が始まりました。相手方弁護士からは「給料3か月分程度の解決金で合意してほしい」との打診がありましたが、当職は本件解雇がいかに法的に不当であるかを詳細な書面で理論的に指摘し、妥協せずに交渉を継続しました。
本事例の結末
最終的に、相手方会社がこちらの主張を全面的に受け入れる形となりました。解決金として、示談に至るまでの期間の給与相当額(バックペイ)全額と、未払い残業代を合わせた約400万円を支払うという条件で示談が成立しました。
この金額は、仮に訴訟に移行して全面勝訴した場合に得られる最大級の金額に相当します。訴訟という長期戦を避けることができ、交渉という簡易かつ迅速な手続きで満額を回収できた成功事例となりました。
本事例に学ぶこと
本事例から学ぶべき重要な点は、会社側から解雇の理由として具体的な落ち度を指摘されたとしても、それが直ちに法的な解雇の正当性を担保するわけではないということです。事故や遅刻といった事実があったとしても、解雇が「社会通念上相当」と認められるには高いハードルがあり、労働者の権利は法的に強く守られています。
また、不当解雇を争う際には、解雇そのものの是非だけでなく、運転日報などの客観的な証拠から残業代などの付随する権利を漏れなく主張することが、最終的な解決金の増額に大きく寄与します。会社側が当初どれほど強硬な態度であっても、法的な見通しに基づき、訴訟辞さない姿勢で粘り強く交渉することで、訴訟に至る前の早い段階で納得のいく結果を引き出せる可能性があることを示しています。
弁護士 遠藤 吏恭







