就業規則とはどのようなものか、どのように閲覧できるのか

皆さんは自分が勤める会社の就業規則を見たことがあるでしょうか?

就業規則には、自分の労働条件が記載されています。万が一懲戒解雇されてしまった場合、懲戒解雇は就業規則との関係で問題がある可能性があります。

本コラムでは、就業規則とはどのようなものか、懲戒解雇をされたときに何をすればよいのかという点について解説します。

就業規則とは

就業規則とは

労働契約の内容である労働条件は原則として会社と各労働者との合意によって決定されます。

しかし、個々の労働者とそれぞれ個別に合意をしていたのでは会社にとって大きな負担となってしまいます。

そこで、実務では会社が就業規則という形で労働条件を提示して、労働者がその内容を承諾するという形を取ることが多いです。

つまり、就業規則とは、会社が多数の労働者を雇い入れ、効率的に事業を経営するために、職場の規律や労働条件について作成する規則です。

就業規則は法律で以下のように規定されています。

法令や労働協約に違反してはならない

労基法は、就業規則は法令や※労働協約に反してはならないと規定しています。

また労働契約法でも、就業規則が法令又は労働協約に反する場合、その反する部分は労働契約の内容とならないと規定しています。

※労働協約とは、労働組合が労働者の賃金や労働時間等の労働条件等について、会社との間で締結するものです。

会社の義務

会社は、就業規則を常時作業場のみやすい場所に掲示し、または備え付ける等の方法で、労働者に周知させなければならないとされています(周知義務)。

したがって、労働者は会社に対し就業規則の閲覧を請求することができ、会社がこれに応じないことは労働基準法違反のおそれがあります。

ここで注意しなければならないことは、会社が周知義務を負うのは従業員に対してであることです。会社は、退職した元従業員に対しては就業規則を閲覧させなくても問題ないということになります。

そのため会社を辞める前に就業規則を閲覧しましょう。

また常時10人以上の労働者を使用する者は、就業規則を作成したうえで労働基準監督署に提出しなければならないことにもなっています(作成・届出義務)。

就業規則の効力

労働契約法は、就業規則の内容と異なる労働条件を労働契約で合意していた部分については、就業規則によらずその合意した労働条件により決定されると規定しています。

もっとも、就業規則の定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その基準に達していない部分について無効となると規定しています。

そして無効となった部分は就業規則で定める基準によることになっています。

就業規則の変更

労働契約法は、使用者が労働者と合意することなしに就業規則を変更し労働者の不利益に労働条件を変更することはできないと規定しています。原則として、会社は労働者に有利な就業規則の変更は自由に行うことができるが、労働者に対して不利な内容の変更であれば一方的に行うことはできません。

もっとも、労働者にとって不利な内容の変更であっても、変更が合理的かつ変更後の就業規則を周知させた場合、例外的に会社は一方的に就業規則を変更することができます。

(参照条文)

労働契約法9条使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することによ
り、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは
できない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
同法10条使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変
更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者
の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の
内容の相当性、労働組合等との交渉の状況
その他の就業規則の変更に係
る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労
働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。た
だし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によって
は変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条
に該当する場合を除き、この限りでない。

就業規則に必ず記載しなければならない事項

就業規則に必ず記載しなければならない事項

就業規則には以下の事項を必ず記載しなければならないことになっています。

・始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交代制労働の就業時転換に関する事項

・賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締め切りと支払の時期、昇給に関する事項

・退職に関する事項

退職に関する事項

会社は就業規則に退職に関する事項を必ず記載しなければなりません。

つまり、労働者を懲戒解雇するためには、会社は懲戒解雇事由を就業規則で定めておく必要があります。

具体的には以下のような事由を懲戒解雇理由として規定されていることが多いです。

・経歴詐称

・重大な業務命令違反

・セクハラ・パワハラ等の職場規律違反行為

・業務上横領や背任等の業務上の背信行為

・長期間にわたる無断欠勤

懲戒解雇されてしまったら・・・

懲戒解雇されてしまったら・・・

就業規則に定めのない理由による懲戒解雇は不当解雇となります。

もし懲戒解雇が言い渡されてしまったら、まず就業規則を確認してみましょう。

従業員でいる間であれば、会社に対し就業規則の閲覧を請求することができます。

既に会社を辞めてしまっている場合には、就業規則の設置義務のある会社に対しては、在職中の状況が一定の場合には労働基準監督署に閲覧を請求できます。

自分の懲戒解雇理由を確認しそれが就業規則に記載された事由に当たるのか疑問を持った

まとめ

まとめ

・就業規則とは、会社が多数の労働者を雇い入れ、効率的に事業を経営するために、職場の規律や労働条件について作成する規則である

・労働時間に関する事項、賃金に関する事項や退職に関する事項は就業規則に必ず定めなければならない

・就業規則に定めのない理由による懲戒解雇は不当解雇となる

・就業規則は従業員であれば会社に閲覧請求できる

・不当解雇ではないかと疑問に思ったら弁護士にご相談を

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 椎名 慧(しいな さとし)
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