
会社との間で解雇無効等の労働紛争が生じ、それが裁判所に持ち込まれた場合、当事者間で和解をして紛争を終結させるという処理があり得ます。
和解においては金銭解決の形式が選択されることが大半であり、金銭支払いの名目としては「解決金」という名目が使われることが多くなっています。
今回は、「解決金」と税金の関係性について解説をしていきます。
「解決金」という名目

労働者と使用者の間で解雇無効等の労働紛争が生じた場合、労働者は労働契約上の地位確認請求、解雇無効期間中の賃金請求、不当な解雇による慰謝料請求、場合によっては残業代・退職金請求といった諸々の請求を使用者に対して行うことになります。
裁判所の手続が進み、和解による解決が妥当であろうと判断された場合、当事者双方で和解条件について協議を行うことになりますが、金銭条件については上記の各請求をない交ぜにした協議になりがちです。
その結果、金銭条件については未払賃金等特定の名称を付すことが適当ではないという状況が生まれ、使用者から労働者に対して支払われる金銭には「解決金」という名目が使われることになります。
「解決金」と税金

「解決金」には賃金、退職金、慰謝料など様々な性質が含まれるため、自ずと税金の処理も分かりにくくなります。
賃金であれば使用者側で源泉徴収が必要、慰謝料であれば源泉徴収は不要、では双方の性質を有する「解決金」ではどのような処理になるのかという問題です。
使用者側では事後的に税務署から源泉徴収漏れを指摘されたくないという観点から賃金的な側面が含まれるのであれば源泉徴収処理をしたいと考えることとなり、労働者側では源泉徴収分を控除せずに和解で合意した額面通りの金額を支払ってほしいと考えることになります。
裁判所の考え方

労働事件を取り扱う裁判所の感覚としては労働紛争の解決が主目的であり、税金の処理についてはあまり興味がないというのが正直なところかもしれません。
他方で、労働紛争に関する和解をした後に使用者が合意した金額から源泉徴収分を差し引いて支払ったという事案について裁判所は以下の判断をしています。
長崎地判平成30年6月8日
「原告は,本件解決金の性質が退職所得に該当することを前提として,本件和解により支払うべき金員はすべて支払い済みであると主張する。
しかしながら,本件和解の和解条項には,「本件解決金として150万円」との記載があるのみで,同金員の法的性質や内訳についての記載はない。訴訟上の和解において一定の金員を支払う場合,訴訟物である債務の給付としての賃金,貸金,売買代金及び賃料等をそのまま支払う金員の名目とすることがある一方で,当事者の感情に対する配慮等の様々な理由に基づき,支払う金員の名目を「解決金」や「和解金」等とすることも頻繁に見られるところである。
そして,訴訟上の和解の和解条項に「解決金」や「和解金」等と記載された場合の金員の法的性質には,訴訟物である債務の給付としての性質を全部又は一部含む場合もあれば,訴訟物としての債務とは全く関係なく,将来の敗訴の危険度及び弁護士費用を含む訴訟追行費用の回避のために,正に現時点で紛争を解決するための費用としての解決金の性質を全部又は一部含む場合,さらに,当事者において,内心ではそれぞれ思惑を異にしたたままであり,和解により訴訟を終了させるための支払であるという以上にその金員の性質について認識の一致がなく,受訴裁判所を含め,和解成立のための金員という以上にその法的性質を明確に判別できない場合もあることは,当裁判所に顕著な事実である。
そうすると,和解条項に「解決金」と記載された金員の法的性質について,仮に和解を成立させた当事者及び受訴裁判所の認識を確認したとしても,その認識が和解条項に表現されていない以上,訴訟を終了させるために支払われる金員という以上にその法的性質を確定することは事実上極めて困難というべきである。
そうすると,本件全証拠によっても,本件解決金の全部又は一部が退職所得の性質を有していたと認めることはできず,この点に関する原告の主張は,採用することができない。」
まとめ

今回は、「解決金」と税金の関係性について解説をしてきました。
労働紛争が有する複合的な性質を踏まえ「解決金」という抽象的な表現が選択されている以上、その法的性質について明確な区別をすることはできず、特定の費目を前提とする税金の処理を行うことは困難であるという結論自体に異論はありません。
「解決金」と税金の関係について、和解成立後に使用者と新たな紛争を生じさせないためには税金の処理も含め和解協議の中で整理するということが理想ですが、双方で税金の処理に関する認識が一致することは多くないため、やむを得ず、税金の処理については棚上げとしたまま和解が成立するという状況も見られるところです。
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