紛争の内容
相談者の方は、専門的な能力を有して働いている一方で、劣悪な環境に囲い込まれており、退職しようと試みるも強硬に反対されて退職できないということを繰り返されていました。そこで、弊所へ相談にいらっしゃるに至りました。

交渉・調停・訴訟等の経過
相談者の勤務先は、相談者の能力を必要としながらも、相談者に不当な扱いをしており、その上で永遠に終わらない引継をしないことには転職させない態度を繰り返し強硬に示していました。そこで、相談者は意を決して、転職先を決めた上で、弁護士に退職代行の依頼をするに至りました。

私からは、相談者に対して、最低限の引継をした上で退職しないと後々厄介なことになり得ることを説明し、相談者自身もぜひともきちんとした引継をしたいとの希望を持たれていたことから、退職代行を依頼してからも勤務先に行きました。話の流れで、相談者が会社を辞めて別の会社に転職することが分かってしまいました。会社の社長は怒り、転職先に対して違法な引き抜きだなどとして損害賠償請求をするなどと言い出しました。そのような中、弁護士からの退職の意思表示の書面が届き、あまり無茶なことは言えないと思い至っていただくことができました。

本事例の結末
相談者の方は、無事に予定通りのタイミングで会社を辞め、決まっていた転職先で勤務をすることができるようになりました。また、私から会社に対して、退職時に必要な書類の提出を求めていたこともあり、スムーズに退職手続きを進めることができました。また、万一転職先を訴えるなどということを言い出したら、相談するよう伝え、心理的なサポートもしていきました。

本事例に学ぶこと
世間には、退職代行を行う民間事業者がいます。しかし、当該業者は弁護士資格を有しないため、ただ単に「辞めます」と伝えるだけしかできません。そのため、紛争の火種があるとき、それを未然に防ぐには弁護士に退職代行を依頼するべきです。

退職代行を依頼するということは、よほど追い詰められていることと思われます。争いごとを弁護士に委ねて安心して次の人生を送ることができるよう、退職代行を依頼する際には、弁護士に依頼することを強く強く勧めます。

弁護士 平栗 丈嗣