紛争の内容
上司のハラスメントを指摘したが社内で握りつぶされた、会議において再びそのことを持ち出したところ、急に遠方への異動が命じられた、転勤なしと聞いていたため異動を拒否したところ、懲戒解雇とされたというご相談でした。

異動の経緯や転勤なしという労働条件から会社の対応には問題があると考えたため、まずは交渉事件の代理人として受任しました。

交渉・調停・訴訟などの経過
早速、会社に対して解雇の撤回とあわせ解雇の理由の説明を求めました。

会社側にも代理人がつき、交渉を行ったところ、多少の解決金で和解できないかという提案がされたのですが、条件が折り合わず、やむを得ず訴訟提起を行うこととしました。

訴訟では、会社にはそもそも配転権限がないこと、仮に配転権限があったとしても配転が不当な動機に基づくものであること等を主張しました。

会社側は転勤なしという合意はしていないこと、異動には業務上の必要性があること等の反論の主張を行いました。

審理は尋問まで進みましたが、尋問後に裁判所から、会社が相当程度の金額を支払う代わりに雇用関係を解消するとの和解をしたらどうかとの勧めがあり、その後は和解条件の調整に入りました。

本事例の結末
最終的には、会社が10か月分の賃金相当額を解決金として支払い、懲戒解雇を撤回の上、会社都合退職とするという内容の和解が成立しました。

本事例に学ぶこと
配転命令は時として報復的に用いられることがあります。

不当な目的による配転命令は無効との判断になりますが、訴訟等において会社側の不当な目的を立証することはなかなかにハードルが高いと言わざるを得ません。

会社はそれらしい配転の理由を作り上げる一方、不当な目的を示す直接的な証拠が残っていることが少ないため、業務上の必要性に基づく配転との認定になりがちです。

実際の場面では難しいことが多いのですが、配転の前後の事実関係について可能であれば録音等の証拠を保持しておくことが重要となります。

弁護士 吉田竜二