紛争の内容
依頼者は運送会社に就職しましたが、なぜか入社間もなく「業務委託契約書」に記名させられてしまいました。契約書には、3ヶ月更新であり、継続的な安定した仕事を行うことが不透明なものとなっていました。
その後、依頼者は仕事を行う中で交通事故を起こしてしまい、会社から業務委託契約を期間満了による終了として契約解除がなされてしまいました。

交渉・調停・訴訟等の経過
依頼者は、これは不当解雇にあたるのではないか、業務委託契約であるから仕方がないのか、相談をされるに至りました。依頼者から業務内容等を詳細に聞いていくと、業務委託・請負・委任とは名ばかりの、事実上会社に全てを拘束される雇用契約を内容とするものでした。
そこで、会社に対し、事業実態や求人情報等、労働者性を裏付ける主張をし、会社と依頼者との関係は雇用契約であって本件契約解除は不当解雇であると主張しました。
すると、会社側にも弁護士が就き、労働者性を争うとの反論をしてきました。しかし、それと同時に、依頼者が交通事故を起こしたために仕事を行うことができなくなったことを理由とする損害賠償請求をする構えであることを示してきました。

本事例の結末
会社の損害賠償請求の内容は不合理なところがありましたが、請求されてしまうと依頼者も応訴せざるを得なくなります。そこで、1ヶ月分の給与相当額の解決金を会社が支払うことで、今後損害賠償請求もしないことを約束する合意をするに至りました。

本事例に学ぶこと
残業代の支払いを避けたり、不当解雇であるとの反論を避けるため、安易に「業務委託契約」「請負契約」「委任契約」との名前を付け、場合によっては本件のように契約書まで作成させるケースが散見されます。しかし、労働法の適用を受けるかどうかの判断にあたっては、契約の名称ではなく、契約の内容に即した判断がなされます。
残業代を支払ってもらえない、解雇ではなく契約解除だとして仕事を失った、という問題に直面した際には、弁護士に相談されることを強くおすすめします。

弁護士 平栗丈嗣